お酒の歴史と思いが伝わる。「肥後の酒蔵と民藝 日本酒の歴史あれこれ」

休館をはさみ、2月9日(火)から再開館した熊本国際民藝館。
今回の企画展は「肥後の酒蔵と民藝 日本酒の歴史あれこれ」です。
民藝館の収蔵品だけでなく、
熊本酒造組合様のご協力により、
いつもは門外不出という品々も展示しております。

今回ご協力いただいたのは、熊本を代表する日本酒蔵元10社のみなさん。お忙しい中、ありがとうございました。

 

猿猴(えんこう) 
猿猴は猿の姿をした妖怪の一種だそうですが、この道具は、いわゆる宴会グッズです。
宴会の際は参加者同士が動き回って盃を交わし合う姿がよく見られますが、立ったり座ったりは年を経るにしたがってなかなか大変になるものです。
そこで細い板の先に丸い穴をあけ、そこに盃をおいて、相手に差し出すために生まれたのがこの「猿猴」。
「れいざん」で知られる高森町山村酒造に古くから伝わっているという心優しい珍品です。

 

持ち運び燗付け機
コンパクトで機能性も十分。しかも心惹かれる形。
今でも「欲しい!」という方がおられるのではないでしょうか。

 

猪口・盃
蔵元の名前が入った酒器も展示されています。行事の際に作られたり、粗品として配られたものも多かったようです。
当時の食文化を感じさせるものもありました。

 

升立て
お酒を大切にする思いが作ったのであろう升立て。お酒が入っていた升を立てると中に残っていたお酒が集まって、下の樋から流れ出すというもの。
少しのお酒も無駄にしない、人の知恵、ですね。

 

屠蘇器
焼き物の屠蘇器。漆器の屠蘇器が多い中、焼き物も素敵です。

 

そらぎゅう
九州南部で見られる独楽のような形をした盃「そらぎゅう」。お酒が入ったまま下に置けず「そら」とすすめられると「ぎゅう」っと飲み干さないといけない、ということでこの名前がついたそうです。

 

天秤と分銅
今回の展示では、酒造りに使われた道具も展示しています。お酒の重さを測っていた天秤と分銅です。

天秤の目盛りの部分はキラキラと輝いています。暗いところでも見やすいための配慮だったのでしょうか。

 

今回は「麻地酒」に関する古文書資料も展示しています。
「麻地酒」とは冬に仕込んだお酒を土の中に埋め、夏に取り出して飲むという、豊後(大分)、肥後(熊本)で作られていたお酒だそうです。
米が原料のため、戦時中に製造が絶え、今では具体的な製法がわからなくなった、まさに「幻の名酒」です。

 

このほかにも、今しか見られない品々を展示しております。
この機会に、ぜひ、ご来場いただき、日本文化に欠かせないお酒の文化とそこに込められた思いを感じていただければと思います。

※熊本国際民藝館では、マスク着用、入館の際のアルコール消毒など、コロナウイルス感染症拡大防止対策を行っております。